現在、都内の劇団に所属し、主に舞台俳優として活動しています。
盛岡四高で過ごした三年間、良い思い出は正直あんまりありません。今思えば、人との距離感の測り方の“悪い例”を身につけて行った時間だったかも知れません。「こういう関わり方をすると孤立するのか。」「こんな態度は人を怒らせるのだ。」とか…。気分屋ですぐ調子に乗ってしまう僕は、高校時代多くの人たちと接しては、距離感を間違え、微妙な関係性になって燻ってしまったように思います。
この燻りもちろん厄介でしたが、今僕が演劇を続けている原点は、高校時代の燻りがあったからかも知れません。人付き合いも含め“社会性を身につける”事に何かしらの抵抗を感じたり悩んだりしている生徒さんがもしこの文を読んでいたならば、演劇をはじめ芸術関連の道も悪くはないと話したいです。もちろん簡単な進路ではありませんし、経済的に不安定な生活を余儀なくされます。しかしながら自分の精神を日々刷新して進んで行ける面白さはあります。
四高卒業の際、卒業式での校長先生の祝辞で今でも覚えている言葉があります。「人は、人によって、ひとになる。」この言葉、今思うに「人は、人によって、人間になる。」ではないかと思います。当時の僕は人間ではなかった。人と人の間を大切にする、人間ではなかったのだと思います。現在でも立派な人間だとは思いませんが、少なくとも僕は、演劇のおかげで人間になれた。演劇に関わり続ける事でたくさんの人と深く関わり、そのおかげで色々経験し、他の人間に興味を持てた。高校時代の燻りがあったからこそ、それをなんとかしたくて演劇に出会い、今の僕になりました。
東京から新幹線で帰郷する度、盛岡駅が近くなると、右手側の窓から四高を探します。校舎の小豆色の三角屋根が見えると、ふと胸が痛むような感覚になります。四高で過ごした日々は、胸の痛みを覚える大切な日々であったと思います。